のらりくらり

いつだって漂っていたい

鏡の前であなたの言葉 真似するけれど けれど、もう

 

 

ということで『風の谷のナウシカ』見ました。何回目だろ、3回目くらい?

ジブリファンだと申しておりますが、「飛びぬけてラピュタの知識がある・小さいころトトロを毎日のように見ていたのでトトロもわずかに・昔エレクトーンで演奏したのでもののけ姫に思い入れがある」ってくらいで、他のものには疎い。見たことあるし知識はあるけど台詞言ったり熱く語ったりできない。おもひでぽろぽろ、小さいころ大好きでよく見ていたらしいが(母親談)全然記憶にないよ!

ナウシカは小さいころ見たことあるんだけど、よくわかんないなーおもしくないなーっていう印象だった。その印象が邪魔をしてしばらく見れなかった(むしろ、ナウシカっておもしろくないよねーってスタンスだったの、信じられない)んだけど、1~2年前に見てこりゃあ…!とわなわなした。

 

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今回、ナウシカに対してとても複雑な感情を抱きました。ジブリガールたちはあたしが「こうなりたいなぁ」「でももう遅いよね、」「ていうか初めからむりだよな」っていうようなガールが多くて、憧憬と共にすこしだけ嫉妬してしまう。だからすき。

ナウシカはとにかく美しくて気高くて純粋で賢くて、そして才を持っている。風の谷の国の「姫」であり、風を操ることができる。そのうえ、人間外の生き物と心を通わせることができる。

テトとの出会いのシーン。本来は人間に懐かないとされる凶悪なキツネリスに「おいで、こわくない、」と優しく声をかける。警戒するテトは、近づいて牙を向ける。噛みつかれてなお振り払うことなく優しい声をかけ続けるナウシカに懐くテト。「ほらね、こわくない。怯えていただけなんだよね。」

噛みつかれて踏みとどまることができ、なおも優しい言葉をかけ続けることの強さ。その強さはあたしにはない。

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また、村には毒に冒されて手に障害を抱える老人がちらほらといる。彼らの手は、一見醜い。けれど、その手をナウシカは「好きだ」という。「働き者の綺麗な手」と。

この純粋さはあたしにはない。失われたのではなくて、初めからなかったもの。純粋さ、がなかった訳ではないが(たぶん)この類の純粋さはなかったなーっておもう。例えば、街中で火傷のあとがあるひとを見たとする。その時どう思うか。「醜い」「あたしじゃなくてよかった」。もちろん、次の瞬間はその考えを否定するんだけど、反射的なものは避けることができなくて、あたしはどうしてもそう思うことをやめられない。昔に比べてそう思うことに罪悪感抱くようになっただけましかもしれないが、今だにどうおもうのが正しく美しいのかわからない。そして、見せかけの言葉を吐くのが嫌いなあたしは、曖昧に微笑んでやり過ごすことしかできない。

そう考えたら純粋さというより、心の美しさか。

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心が美しくないと言えない言葉ってある。たとえ言ったとしても、それは嘘臭さを孕む。だって「心から思っていないから」。よどみのない美しい言葉、それを発することができるのがナウシカ。ナウシカのように、力強く純粋な言葉を発することはあたしにはできない。あたしが言ったら嘘臭さを孕んでしまうことがわかっているから、言えない。

これが悔しい。

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こんな天使のような姫様だけど、唯一、父が殺されたところを見た時に怒りに我を忘れて殺した兵士たちに仇討する。つまるところ、人を殺す。そんな自分に怯える姫様。憎しみに駆られて自分が何をするかわからない、そのことが怖い、と。

美しいだけじゃない、こういう暗い部分も抱えてる。慈悲深いが故に自分の国に対する攻撃に対して過剰反応してしまう。暗い、と言っても正義からくるものだから、一見美しく見える。けれども確かに「憎しみ」が共存している、こういう部分もあるからこそ、姫様好きだなーっておもうのよね。 

姫、というポジションは生まれながらに決まっている。一身に国民の愛を受けて育ったから、「愛する」ということにためらいがないんだろうし、そういうひとたちが悲しむような出来事が起こった時、同じように悲しむことができるんだろう。ただ、愛するものの分母が多いから、たいへんだよなーっておもう。たぶんナウシカ自身は大変、だなんて微塵も感じていなくて、それを当然のこととしているけど。姫の義務、という意味ではなく自分の本質のままに。

あたしは好きだなーとおもえる友達に対してナウシカのようなスタンスでいたいと思っているけれど、それはそういう対象の友達がそんなに多くはないから言えること。そんな度量だってない。

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姫様を見ていると時に肌が粟立って泣きたくなる。気高い人は美しく格好良く、そういうひとやものをみていると泣きそうになるのだが、それとおなじなんだろうなぁ。これは単なるトキメキなのだろうか。

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最後に恥ずかしい話をすると、あたしの基本属性がヒロインだから(!)、結局現実に落とし込んだ時にそれが空想に過ぎぬと気づいてしまって歯がゆいんだろな。基本属性がヒロイン、というのは、周りの人に愛を注いでいたいし、その人たちの悲しみは分かち合いたいし何かあったら共に戦いたい、ナウシカのように強く気高くうつくしく在りたい、という意味。たかがアニメーション、現実じゃない。

けれど、ここには正しいものがあるし、いっそ現実の鏡でもある。

 

【自分用メモ】

ナウシカのシーンで「うわぁ完璧!」とおもったもの。

1.ナウシカ泣いてるの?→うん、嬉しいの。

ここのシーンの美しさと姫様の表情、言葉、すべて。このシーンを見て抱いた胸の高まりは、ラピュタのロボット兵がシータにお花を差し出すところと似ている。

2.ナウシカが王蟲に吹き飛ばされるシーンからラストにかけて。

この盛り上がりは、個人的にはラピュタでいうバルス以降って感じなんだけどどうですかね。