のらりくらり

いつだって漂っていたい

熱帯夜続く足音響く鼓動

何がきっかけだったかもはや忘れてしまったけれど、「Nのために」を見返してる。

 

毎話グッとくるんだけど、ひとまず第3話で号泣した。父親に土下座して大学の資金を出してもらうところ。あれは自分を捨てた父親とその愛人に復讐したシーンだ。子供の皮を被った悪魔のような恐ろしさ。けれども、希がそうなってしまったのはひとえにその人たちのせいなのだ。

たくさんの人たちがいる棟上げかな?なにかのめでたい儀式の中、実の父親に向かって、彼の言葉を借りて、その場にいる多くの人たちを中傷する。「子供」という大義名分をかざしながら、実の父親を肯定して、周囲の人を否定する。そうして彼の立場を悪くした上で、実の父親に向かって土下座をする。狭い世界で生きている島の人間からすると考えられないことだろうけれど、彼女はこの愛人に土下座を強いられていた過去があったから、島を抜け出すためなら手段を選ばなかった。

結果的に立場も部も悪くなった父親が、「お金を出さないとは言っていない!」と吐き捨てて、希は未来を手に入れるのだ。妻と実の子供を捨て、追い出し、愛人と暮らすことを選んだ自己中心的考えな男も、信頼によってある程度成り立っている立場(社長)にいる以上、実の娘の一芝居には負けた。愛人の女も土下座した希に気を遣っている素振りを見せて威厳を保とうとするも、希から見下されて一蹴される。あれはまさに、土下座をしておかずをわけてあげていた日々からの解放と言えるのではないか。

 

第4話にて、西崎に究極の愛を問われた希が口にしたのは、「罪の共有」だった。共犯でもなく、誰にも、相手にも察されることもなく、罪を引き受け、身を引く。それが究極の愛であると。

その時点では料亭さざなみの火事のことを言っていたのだろうが、結局は自分が苦しい時に支え、助けてくれた、成瀬に対する愛なのだよなぁ。お互いにつらく苦しい時期を共有してしまった。淡く甘酸っぱい恋などをする余裕すらなかった二人(正確には希、成瀬は希に対して恋をしていると思う)は、気が付けばお互いを支えにして生きるようになる。

ん、ちょっと違うか。

成瀬は希に対して恋をしていた。「あわよくば」を包括した、年相応の恋。その相手が辛い時期に、たまたまその苦しみを共有し得る機会を得たから、年相応な恋ができなくなってしまったんだ。

たぶん、東京に行って父親を亡くした後、成瀬は希のことを忘れている。街中で成瀬を見かけた希が追いかけて名を呼ぶが、希の呼びかけが届かなかったのも、一人の世界に没入してしまっていた証拠だろう。そんな余裕なんてなかった。だって彼にとって希は「恋する相手」であり、一種の「希望」だったからだ。父親を失って自暴自棄になった彼にそういうものは、不要になってしまった。

一方の希にとって、成瀬は恋愛対象ではなかった。けれども、苦しい時期に助けてくれた相手であり、自分を保たせてくれる「支え」だった。それは東京に出てもずっと変わらず、心の中に成瀬が居続けている。ある意味、彼の存在は彼女にとって「救い」と言えるのか。

そういう意味では、二人の感情は綺麗にズレているんだよなぁ。お互いに愛を持って接してはいるけれど、全く別物なんだよ。

 

きっとあの日、東京で、成瀬に希の声が届いていたならば、彼は犯罪に手をそめることなどなかった。けれども、それは同時に物語の終着点が変わることも示している。

 

感情のまま書いたのでまとまりがないけど、もう寝ます。